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CORRESPONDENCE / LANDSCAPE 018
Self-Scape

Solo Exhibition
隼田大輔 ( Daisuke HAYATA )
“Golden Sheep”
アートディレクター クボタタケオ

2018.7.7
SAT - 7.28 SAT


OPEN 12:00 CLOSED 19:00 / 月・火休廊
(※日曜 18:00)
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OPENING PARTY:2018年7月7日(土) 18:00 - 20:00
隼田大輔 × 杉浦榮 トークショー「発見する風景、創る風景」:2018年7月14日(土) 17:00 - 18:00
詳細はコチラ
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プロローグ

2009年、私はパリからロンドンへ向かう列車に乗っていた。ドーバー海峡を抜け、イギリスの国土が見えてくる。夕方の霧が、幽霊のように海辺をさまよっていた。海にそびえる崖の上には閑散と木々が並んでいる。私は白く霞んだ景色の中に小さな点をいくつか見つけた。「あれは何だ?」と目を凝らすと、羊だった。私は生まれて初めて羊を見た。列車に乗っている一瞬の出来事だったが、霧に包まれた羊のいる光景の美しさは私を魅了した。

芸術にとって重要な観念である「美」という文字は、「羊」から誕生したという説がある。洋の東西を問わず、古代において羊は日常的な食料や衣服に使われるだけでなく、神への犠牲として捧げられていた。その重要性が「美」という抽象概念に結びついたと想像すると、私がイギリスで見た光景は「美の起源」と言えるのかもしれない。

日本において、羊が定着したのは明治近代以降である。それ以前にも羊の繁殖が試みられたが、寒冷地に住む羊が日本の温暖湿潤な気候に適応できなかった。天平勝宝時代 (749-757)の絵画に、正倉院の『羊木臈纈屏風』がある。ペルシアから伝わってきた絵画様式を模したものと考えられているが、私には、羊を見たことのない日本人が、脳内のおぼろげな輪郭を表現したものに見えてしまう。そして、その画像は私の脳内において、イギリスで見た霧に包まれた羊の記憶と重なった。この絵画が制作されて1260年あまり経過している。今後の劣化によってその肉体が消えてしまう前に、それに代わる羊を創造するのが私の役目であると、いつしか思い始めた。


隼田大輔
プロフィール

1981 兵庫県生まれ
2002-2003 フランス滞在
2005 横浜市立大学商学部社会学専攻卒業
2009 「うばたま」ギャラリー工房親, 東京
2010  ALLOTMENT TRAVEL AWARD 受賞
2012  写真集『うばたま』(私家版)出版
2016  「Golden Sheep」PDN EXPOSURE AWARD 入選
2016 STEIDL BOOK AWARD JAPAN 入選
2017 「Golden Sheep」POND GALLERY

など、他多数




アートディレクター / クボタタケオ

landscapeからselfscape …風景表現は当然のごとく表現者の知覚が作用しているため、様々なイメージを産み出し、それが時代や環境にシンクロしてヒトの共通する記憶として変換され継承される。今回の隼田大輔の風景はその作用をさりげなく見せつつ、澄んだその光の世界は我々の前に新鮮な美として表示される。光の記憶としての風景…風景のそのカタチに見えるものを定着しつつ、見えないものをも強く引き出している。これは作者・鑑賞者と風景の外的・内的関わりの相関関係により熟成され普遍化した場そのものであろう。



CHIKA Art Gallery (工房親) / 馬場隆子

工房親が企画し、クボタタケオ・アートディレクターと組み主催してきた映像を中心とする企画展「CORRESPONDENCE / LANDSCAPE」はもう20回を超えている。2018年は、以前にも登場してもらった隼田大輔展とする。


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